2016.Aug.19 Posted
Esperanza Spalding『Emily’s D+Evolution』
2016年、現時点でこの作品が僕の今年のベストアルバムであります。
特にTr.2「Unconditional Love」は今年一番の名曲。この曲以上の感動に僕はこの先いつ出会えるんだろうか。しばらくかかりそうだ。
エスペランサスポルディング。彼女はベーシスト兼シンガーで、弱冠20歳にしてかの有名音大バークリーの講師として招かれています。ジャズをベースにしながらも多種多様なジャンルを縦横無尽に取り込んで、もはや一口に○○と言い切れない近未来的なポップスを体現してきた希有なアーティスト。
実は3年前にLIVEを観ているんだけれど、その時には大所帯のビッグバンド編成で、古き良きブラックミュージックを感じさせながらも、ものすんごい複雑な展開の曲が目白押しで、LIVEのクライマックスに超絶難しいメロディラインのコール&レスポンスが始まり「こりゃ日本人どころか世界的にも歌える人少ねーよ!」っていう、見た目も声もめちゃくちゃキュートで人なつっこそうなのに、至る所が常人離れしているミュージシャンという印象でした。
今作もそういう意味ではやはりむちゃくちゃ複雑なことをやってるんだけど、彼女のメロディセンスと演奏の気持ちよさが過去作よりも段違いにずば抜けてる。複雑さがちっとも気にならないくらい楽器の数もシンプルでどの曲もスーッと入ってくるし、なんだか素晴らしい映画を観ているような展開に感情が自然と揺さぶられてしまう。
しかも今回のアルバムのLIVEはなんとミュージカル仕立てになっていて(YouTubeに素晴らしい映像が上がっているので興味のある人は是非)、これは是非観たいと思って5月の来日を楽しみにしていたんだが、残念ながら作業が終わらず観に行けず(今年はこのエスペランサの来日とBon Iverの来日を見逃したことが残念2トップ)、観に行った知人はもう絶賛の嵐。
ジャズやソウル、ブラックミュージックのムーヴメントが日本でもわりと若い世代の間で燃え上がりつつある今日この頃、元々そっちが好きな僕としては嬉しい限りなんだが、一つの要素としてジャズを血肉化してこうしたエンターテイメントに昇華する彼女の感覚は、僕らの数十年先を行っている。本当に素晴らしい。打ちのめされた。