Column

Tatsuya Mitsumura 光村龍哉『Like A Rolling Stone』 光村龍哉(Vo.&Gt.)が愛する音楽を新旧、洋邦、ジャンル問わずに自由にレビュー!
光村が経験したことのない事に初挑戦した模様をレポートするこれまでのコーナー『Like A Virgin』も不定期でお届けします。

2017.Aug.8 Posted

Foster The People『Sacred Hearts Club』

すっかり放置してしまいました。久々すぎてこんな風に「ですます調」で書いていたかどうかすらもよく思い出せませんが、なんか一回改まった感もあるのでこのまましばらくですますします。

最近たまたま見つけたニュース記事で「35歳で新しい音楽への扉が閉じる」というのを目にしまして。記事によると数年前のアメリカでの実験の結果によるものらしいですが、まあなんとなく周囲を見ていたりすると(そうなのかなぁ)なんて思ったりする瞬間はこれまでも多々ありました。なので特別驚きはしませんでしたが、やはりそうかと。今この瞬間、これを読んでいるあなたが「まだまだいける」と思っているのか、はたまた焦りを感じているのか、落胆しているのか知ることができませんが、ひとつだけ言えることがあるとするならば、僕に関してはあと3年強の猶予がある、ということくらいでしょうか。ははは。いや、そこは精一杯抗うつもりです。

20歳のときに聴いていた音楽は、それ以降の人生でもずっと好きでいる。もし、35歳以降に新しいジャンルの音楽が現れたら95%の人はそれを受け入れることができない。
舌にピアスをつけるというような新しいファッションへの扉が閉じるのは23歳、新しい味を受け入れることができるのは39歳まで。

(引用元:http://kyouki.hatenablog.com/entry/2014/02/07/075410)

改めて検索してみると、こういうことのようです。新しいファッションへの扉が23歳で閉じる、というのはなかなか衝撃ですね。早すぎ。
人の好みとか価値観は思い出9割だと思っているので、二十歳の頃に聴いていた音楽は一生好きっていうのはよく理解できます。なので、まだ間に合う人はできるだけ二十歳までにたくさん音楽を聴くこと。一生を支えてくれる仲間が多いに超したことはないと思います。

さて、これまでの話と少し矛盾する話をします。「リバイバル」の存在について、です。ポピュラー音楽やファッションの話ですが、ここ数年の80年代リバイバルがようやく落ち着いて、次のトレンドは90年代だ、なんて各所で盛り上がり始めています。90年代というのは僕にとって物心ついて初めてのディケイドなので、そもそも90年代にトレンドもクソもあったかよ、といささか懐疑的だったのですが、NIKEエアマックス95を始め当時のハイテクスニーカーが続々復刻して再びブームになっているのを横目で見ていると、ああ確かに、これがリバイバルかと。でも当時もそういったハイテクモノに僕はあまり興味がなかったので相変わらず食指は動かないわけですが。

じゃあ、ことポピュラー音楽に関しては?
個人的な感覚としては、80年代に比べると圧倒的に90年代の技術(プレイにおいても、レコーディングにおいても)というのは現代に通用するレベルに達していると思っていて、そもそもリバイバルが起こるほど大きな変化なんて起こっていないし、将来的にも起こらないんじゃないか。いやだって、スネアドラムに無条件にくっついてきたゲートリバーブとか、オケヒとか、DX7とか、デジタルに憧れながら最終的にはまだ技術が未完成だったためにアナログで解決しなきゃいけなくて膨大な時間とか労力を費やす羽目になってしまったこととか、「ちょっとくすぐった目な代名詞」的なモノの存在が90年代にはほとんどない。あったのかもしれないけれど、おそらくそれはサイズがデカい、とか、値段が高い、とか、時間がかかった、とかそういうもので、技術的にはほぼ完成されていたんだと思います。もっというとゼロ年代とか10年代なんて日々リバイバルや焼き直しの応酬で新しいものなんてほぼありません。「なんか寂しい」時代に生まれてしまったよなあ、とペシミスティックな気分に浸ることもしばしば。

そんな中、Foster The Peopleの新譜ですよ。開けてびっくり、これがね、もう笑っちゃうほど90年代。。。正しく90’s!ナインティーズ!!!
あんなに「おこるわけない」と思っていたポピュラー音楽における90’sリバイバルがそこに姿を現してしまったのです。
TLCとかボビーブラウンとか、90年代R&B的なアプローチの前半部分は良い意味でかなりくすぐったい。後半の「Loyal Like Syd & Nancy」なんてアンダーワールドとかダフトパンク「Homework」辺りを彷彿とさせるし。
元々トレンドをそうやってエンターテインに昇華する能力の高いグループではありますが、なにより僕が今回のフォスターすごいなあと思ったのは、90年代のちょっと陰湿な空気感までもリバイバルさせたんじゃないかと感じさせるところ。彼らの過去二作に比べると圧倒的に「なんか冷たい」し「なんか暗い」んですよ。きっとそこに至るまでには色んな理由があるとは思うんですけど、僕はこれ結構わざとやってるんじゃないかなと思うんですね。技術的な完成をむかえて「なんか寂しい」ってことがそのまま形になっていたのがある種の「90年代感」だったとしたら、2017年現在、テクノロジーの進化が飽和して、リバイバルで一発当てようみたいな空気も1周して、ちょっと疲れちゃったよね俺たちっていう気分が音楽的に反映される感じってものすごく合点がいくな、と。ちょっと偏屈かもしれないけど個人的にはそこに「90年代を知っていて良かった」という安心感があったんです。そんなの初めて。

「なんか寂しい」ことへのコンプレックスとか、ダサいよなって思っていた気持ちすら肯定できてしまうことがやはり「リバイバル」の真の価値なんですね。そのロジックで「リバイバル」が起こると、その寸前の「リバイバル」は当然飽和するしダサくなる。でもその気持ちは時をおいて再び「リバイバル」することによって肯定される。

あれ。だとしたら、本当に音楽やファッションは早々とその扉を閉ざしてしまうことになるのでしょうか?
抗うロジックをひとつ手に入れたような、手に入れていないような、、、。


追記:
今年もフジロック行ってきました。
いろいろ観ましたが、ファザージョンミスティとCHAIが最高でした。特にCHAIは↑みたいなことを考えていることが恥ずかしくなるくらいぶっ飛ばしててもう本当に最高だった。

2017.May.29 Posted

The Marcus King Band『The Marcus King Band』

友人から薦めてもらった漫画「キングダム」がかなり面白い。
中国の春秋戦国時代、将軍を目指す少年と、後の始皇帝となる秦の王様らの活躍を描く長編なのだが、登場人物の言うことやることがいちいちかっこよくてたまらない。
仲間の絆にきゅんきゅんほろりとくるところもあれば、戦のスケールのでかさも相まって手に汗握る展開も盛りだくさん。
久々に全巻一気に大人買いをしてしまった。
思えば昨年は「真田丸」に「関ヶ原」、一昨年は「アルスラーン戦記」と、ここ最近戦国モノにめっぽう弱い。
それに付随して最近城やら資料館やらを巡っていると意外な事実についでに出くわすこともあったりして、まさしく小説より奇なりというか、そんなあれこれが湯水のように湧いてくるもんだからそれはそれでめちゃくちゃ楽しいんだけど正直ね、時間が足りないっす。
夢中になって追っかけてるとあっという間に時間が経っているっす。
本業に支障出るっす!
そう考えるとレキシって本当に最高っす。
いつか俺もレキシネーム欲しいっす。

さて。「キングダム」も面白いんだが、こちらの「キング」もかなりいけてまっせ。
ということで今回紹介するのは若干二十歳の天才ギタリスト及びシンガーソングライターのマーカス・キング率いるブルースバンド、The Marcus King Band。今年のフジロックでプレイ予定だそうだが、個人的にいま一番観たい新人バンド。
一聴しただけだとヴォーカルにしてもギタープレイにしてもこれを二十歳の子がやっているなんて誰も思わない。
そう思ってYouTubeやらなんやらでLIVE映像を検索してみても眼前に現れたその子が二十歳だなんていきなりには信じられないだろう。
とにもかくにも笑っちゃうくらい二十歳じゃねーんですわこやつ。
曲もソウルフルで上質だし、味のあるギターソロは何百小節だろうと聴いていたいほど饒舌。

それこそデレクトラックスバンドであったり、ゲイリークラークジュニアだったり、これを読んでくれてる読者には少々イナタいかもしれないが、僕的には最近こういうロックこそ野外フェスで観たいし、これぞ真のパーティーバンドだし、最上級のライヴエンターテイメントだと思う。
このカルチャーを颯爽と表現するような若手バンドが日本にも現れたら、一瞬でヒーローになれるよ。

ただ当たり前だけどアメリカ人にとってブルースとかカントリーは演歌みたいなものだから、脈々と育まれたものであるだけに上質で、受け手もそれを楽しむだけの器が備わる。
要するに一朝一夕でカルチャーというものは完成しないのだ。
理想に近づくためには、送り手も受け手も丁寧にその理想を育て上げなければならない。

そう考えると、「キングダム」で描かれている時代は日本だと弥生時代。
日本人がやっと竪穴住居に住み始めたって頃に、中国ではすでにもの凄い城とか完成された文化が存在している。
日中関係の悪化が叫ばれている昨今だが、正直培っている歴史のレベルが違いすぎて僕は頭が上がらない。
そうやってお互いの素晴らしい部分をひとりひとりリスペクトし合うことができれば、世界はもっと平和になると思うんだけどなあ。
歯痒い。

2017.May.2 Posted

Elliott Smith『Either/Or』

RADIOHEADの『OK Computer』から20年ということで何かが起こりそう、というニュースが俄かに話題になっている。
ツアー中、アコギを持つとふとしたときに「Paranoid Android」のイントロを爪弾いていたのでシンクロニシティを感じた。
『OK Computer』はリアルタイムで聴いていたわけではなかったが、高校生の頃夢中になってコピーした。
未だにRADIOHEADのベストアルバムは僕にとって『OK Computer』である。


比較するのもおかしい話だが、そんな『OK Computer』よりもおそらく回数を聴いていて自分の中で色褪せないアルバムがある。
それがElliott Smithの『Either/Or』。
このアルバムも実は今年でリリースから20年経った。
記念のリマスタリング盤もリリースになって、未発表曲やライヴテイクが追加されたファン垂涎の一枚になっている。


元々このアルバムはエリオットスミス自らが全部の楽器をおそらくものすごい狭い部屋で一人でレコーディングして作られたベッドルームミュージック。
音もローファイで独特の雑さがあって、そこに味があるからそもそもリマスタリングの必要なんてない作品なんだが、リマスタリングの効果によってダビングしていないテープのようなクリアさとブライトさが加わって、これはこれで宅録経験者には少々視点がマニアックだがグッとくるものがあった。


僕はこの人の歌、アコギの弾き方と楽曲が本当に大好きだ。
憂鬱な世界の中に美しさの存在を信じた証のようなものが充満している。
2003年に彼は34歳の若さで亡くなってしまったが、彼の残したものは年々自分の中で価値のあるものになっている。
僕自身も自分の信じた美しさや純粋さを音楽の中にちょっとでも残していきたい。
喜怒哀楽の感情の存在をそのまま肯定してくれるような。


20年経っても色褪せないような、そういう音楽を。

2017.Mar.29 Posted

『LA LA LAND(O.S.T)』


「ラ・ラ・ランド」を観てきた。

この作品の監督ダミアンチャゼルの前作「セッション」は、
映画館で働いている主人公の彼女役の女の子がむちゃくちゃ可愛くて恋した、
以外はなんか残念だったので、
この「ラ・ラ・ランド」の評判の良さにはかなり懐疑的だった。
が、しかし、ここはやはり百聞は一見にしかず。
ミュージカル好きとして、これがもし相当な名作だった場合のショックはデカいと踏み、鑑賞に至りました。

結果として映画は、僕的にはまあ、、、まあ、、、。
少なくとも「セッション」よりは良かったかな。

脚本的な行間が多いのがとても現代的。
少々脱線するが今期の連ドラ「カルテット」を珍しく毎週楽しく観ていて、
あのドラマも徹底的に核心を突かず進んでいく感じとか演技もなかなか感極まらない感じとかとても現代的だなと思って観ていた。
現代的っていうのは要するにSNS的ってことで、
全人類総評論家時代の昨今、いかに観客側に発言の余地を持たせてあげられるか、がひとつのトレンドになってる。
「カルテット」は総じてその狙いをひとつの「白黒なんて簡単につけられない。ぜんぶグレーじゃん」な物語に昇華したことに僕は拍手喝采だった。
ので「ラ・ラ・ランド」もそういった意味での突っ込みどころの多さが評価の高さ(多さ?)に繋がっているのかも。

「セッション」同様、やたらとジャズジャズと衒学的な展開が多い割に、
ジャジーな要素は音楽的にほとんどないに等しいところは今作においてもどうだろうと思ったけど、
じゃあなぜおまえはサントラを聴いて(しかもコラムまで書いて)いるのだ、
といわれたら、「Mia & Sebastian’s Theme」がとにかく頭から離れないからだ。
映画を見終わった後かれこれ20回は聴いているし、油断するとすぐ脳内再生してしまう。
コードを解析して自分なりにアレンジしようとしてしまう、からだ。
「ニューシネマパラダイス」のフィナーレ、この感動はあの曲にかなり近い。

「Mia & Sebastian’s Theme」この曲の作曲家が次世代のエンニオモリコーネになれるよう、僕はしばらくこっそりエールを送る。

2017.Feb.28 Posted

Leftfield 『Rhythm and Stealth』


ツアーが始まった。なかなかいい感じの滑り出しなので、これから参加される方はぜひ楽しみに待っていて欲しい。

ライヴにおける超個人的な隠れた楽しみのひとつに、開場中のBGM選び、という作業がある。この作業は特別なことがない限りは十中八九、僕の役目だ。思い返せばA-Sketch主催の年越しイベントReadySetGoの会場BGMもなぜか僕に任されていた。常にそのイベントやライヴの志向性に合わせて僕なりに選んでいるわけだが、僕の音楽ライヴラリが偏っているのか、あるいはそのいわゆる志向性というものの僕の解釈が偏っているのか、頑張って選んでいる割に注目されることはほとんどない。RSG初開催時はA-Sketch主催のイベントと言うことで「A」で始まるアーティストの楽曲縛りで選曲をしてみたが、誰一人その事実に気づくことはなかった。ちょびっとだけ悔しかったのでうちのマネージャーに種明かしをしてみたら「へー」会話終了。まあ、無理もない。今こうしてこの話をしている僕ですら苦笑が込み上げてくるほどナゾな発想である。というわけで、別に今更注目して欲しいとかそういう類いの感情はないので、何選んでるかとかそういうのは今後も特別なことがない限りお伝えすることはないと思ってもらっていい。これからも勝手な解釈で勝手にやっていく。

ただこれだけは書いておきたい。僕のBGM選びには毎回ひとつだけ共通したテーマがある。それは「飲みながら聴くのにちょうどいい」ということ。ライヴハウスだとチケット代とは別にドリンク代取られるでしょ?どこもだいたい500円くらい。普通に飲み物買うよりは明らかに割高。ソフトドリンクしか選べない人にはもうはっきり言ってナゾな価格設定である。払わなくていいんだったら払いたくないって人も多いと思うんだよ。会場入る前に適当に自販機で飲み物買って一気してから行きますからっ!とか思ってる人、絶対にいると思う。でもね僕、嫌いじゃないんだ、この文化。なんかその500円でしか押せないドキドキスイッチがあるっていうか、その500円の酒が運んでくる酔いっていつもとちょっと違うと思うんだよね。だから会場のBGMを選ぶ基準はいつも、自分がついついお酒飲みたくなっちゃうって基準で選ぶようにしてる。ライヴが始まる時にはすでに泥酔、それもいい。要はすこしだけ乱暴に言っちゃうと、チケット代の対価はライヴ本編、ドリンク代の対価がBGMなのかなあと。せっかくライヴ会場って天国にいるんだから、端から端まで素晴らしい時間であって欲しいじゃない?


とまあ書き始めたらずいぶんと長くなってしまったわけだがここまでが前置き(笑)。何の話がしたかったかってレフトフィールドよ。

今回のツアーはFightingと銘打っているだけあって、会場BGMもビートの強いものがなんとなくイメージとしてわいてきていた。安直だけどパブリックエネミーの「Fight the power」とか、あるいはもうちょいエレクトロっぽいものとか。激しさというより強さ。で、久々にCD棚から引っ張り出して聴いてみたらなんかいろいろ思い出したのがこの『Rhythm and Stealth』。

このアルバムとの出会いはたしか中学二年生。当時習っていた英会話教室の先生がリバプール出身で、その先生がこれまた絵に描いたようなやんちゃ兄ちゃんで、サッカーのこととか、音楽のこととか、UKカルチャーをとにかく毎週すごい熱量で教えてくれたんだよなあ。大好きだった。リバプールと言えば当時の僕からしたらビートルズだから、その先生がリバプール帰省する時にお土産買ってきてくれるっていうからなんかビートルズのものがいいって言ったら「そんなダセえもん買って来るかよ!」って一蹴されて。(笑)で、買ってきてくれたのが『Rhythm and Stealth』(と一応ビートルズのキーホルダー笑)だった。「とにかくこれ聴いてみろ、やばいから」と言われて家のラジカセでかけてみたらもうナニコレ。ミニマムなビートがひたすらループしている。当時の俺には新しすぎて、理解できるまで必死になって何回も聴いた。で、何回も聴いてると一見シンプルで退屈に思えたビートの一音一音が実は絶妙に変化していたり、色んな音が重なったり知らない間に消えていったりしていることに気づきはじめて、その音を追っているうちにだんだんナゾの高揚感が込み上げてきたら最後。知らないうちにずっぽしハマってたなあ。ウォークマンでも聴いてたから、CDケースが知らない間にバキバキに割れてたし、そのケースは今もバキバキのまま。

なんとなくの直感で選んだだけだったけど、必死にこのアルバムを理解しようと聴いてたあの感じはある意味自分にとってFightingだったよなあなんて思って、久々に聴いててブルッとくる瞬間が何度かあった。特に聴いてたトラックを1,2曲選んでBGM用プレイリストにぶち込んでおいた。


とまあ思い出をつらつら書いてはみたものの、ライヴ会場の開場中はただただテンション上げといて欲しいだけなんで、こんな話は忘れてじゃんじゃん酒飲んどいてください。

2017.Jan.31 Posted

David Bowie 『Hunky Dory』


現在東京で開催されているデヴィッドボウイの大回顧展「David Bowie is」観に行ってきました。ここ最近観たどんな映画より、どんなライヴより、どんな新譜より、心を揺さぶられた。観に行くチャンスがあるならこれを読んでいるあなたもぜひ観に行ってみてほしい。

ノートに書き殴られた手書きの歌詞とか、きれいに保存されたステージ衣装などなど、展示を観進めていく中でよくこれだけのものをきちんと管理してきたなあというほどとにかく膨大な資料から僕が感じたのは、とにかく純粋に音楽の魅力と可能性を信じ続けた「デイヴィージョーンズ(ボウイの本名)という少年」でした。彼がものすごい才能と閃きの持ち主であることに違いないんですが、彼は決して選ばれた人間なのではなく、きっとデヴィッドボウイがデヴィッドボウイにならなくても誰かがなっていただろうし、そういう点では誰もがデヴィッドボウイになる権利を持っているということ。音楽の魅力と可能性を純粋に信じ続けることが出来るのならば。

この回顧展を観て、デヴィッドボウイに関して正直彼のこと僕は全然知らないんだなと思った。一番好きなアルバムは「ジギースターダスト」だし、ベルリン三部作は音楽の趣味的に一回ずつくらいしか聴いていなかった。出自とか最近のボウイにもあまり興味はなかった。でもなんだか全部知ってる気もした。展示品一点一点をその記憶を確かめるように観ている気もした。


さあ果たして、僕は僕をこんなに全うできるだろうか。


答えは命尽きるその時までわからないとして、そんな僕の心は「Hunky Dory」をいま一番のよりどころにしようとしています。

2016.Dec.7 Posted

2016年ミツグラミー賞

年内最後の更新ということで、今年の名盤を振り返ります。

トップ5は実はMUSICA1月号に書いたのでそちらを確認していただくとして。。。
ここではあえて6位から10位を発表しようと思います。
それくらい今年はトップ5を選ぶのが難しかった、、、。
同率3位!ってのがいっぱいあったんですね。
だからここに記す作品も僕的にはトップ5作品ですよーくらいの気持ちです。

では早速。




6位
HERE / Alicia Keys

ノラジョーンズやレディガガなど、ミューズの新譜が今年は豊作でしたが、中でもアリシアの新譜にはシビれました。
とことん音数を減らしたトレンディな仕上がりと見せかけて、実は結構細かい音がたくさんレイヤーされています。
ニーナシモンっぽい土着的なゴスペルもまた最高。




7位
Foreverland / The Divine Comedy

相変わらずグッドメロディ。
先ほどのアリシアとは対照的にこちらは大群のオーケストラを率いての壮大なサウンドスケープですが、それでもトゥーマッチに聞こえないのは、何よりメロディがシンプルで素晴らしいから。



8位
Phase / Jack Garratt

今年のフジロックで観て、あまりの凄さに笑いが止まらなかった。
彼がライヴで演奏する楽器は、鍵盤、ギター、シンセベース、ドラム、ループシーケンサー。
全部やん。
そう、彼はライヴにおいてすべての楽器をたった一人、しかもかなり高いスキルで演奏しつつ、歌う。
曲もとてもいい。
イギリスの最終兵器。



9位
Hopelessness / ANOHNI

Antony & The Johnsonsとしても活動してきたアントニーヘガティの新プロジェクトということでいいんだろうか。
かなりダンサブルかつエレクトロニックで、今にかなりチューニングを合わせてきていますが、これが超センスいい。
尖ってます。
レディオヘッドとかレッチリの新譜がぬるいなぁと思っていたので、かなりビビッドに響きました。



10位
Light Upon the Lake / Whitney

アメリカの良心って感じのアレンジとメロディ。
丸く歪んだ音が心地いい。
こういうアルバムを一枚僕も作ってみたい。





もし聴いたことのない作品があれば、春休みのお暇な時間にでもぜひ。

2016.Nov.16 Posted

Bob Dylan 『Highway 61 Revisited』


読書量の少ない僕からしたら大前提、ノーベル文学賞の権威がいったいどれだけのものなのか正直今はまだよくわからない。

よくわからないけれど、そんな年にこのタイトルでコラムを綴りはじめたことと、
今回のボブディランノーベル文学賞受賞に思し召しめいたものを感じずにはいられないわけで。
今月はやはりこのアルバムをピックアップすることにしました。


65年リリースのこのアルバムは、僕のコラムのタイトルにもなっている「Like A Rolling Stone」という名曲からスタートします。
様々なミュージシャンにカヴァーされているこの曲。
僕はボブディランのオリジナルももちろん好きなんですが、
ローリングストーンズがLIVEにおいてカヴァーしたバージョンの方がどちらかというとよく聴いたかもしれません。

どちらにせよ、イントロが流れた瞬間に湧き上がる解放感、救済感、そこに僕はこの曲の全てがある気がしています。
さらに言うならば、とどめを刺すかのごとくサビでひたすら歌われる「How does it feel?(どんなきがする?)」という歌詞。
「それはそれは幸せです!ありがとう!」と感謝すらしたくなる気分。
どれだけ悲しい現実がこの曲の中で歌われていても、その気分に抗うことができる人はきっとごく僅かでしょう。


対照的に「Ballad of a Thin Man」におけるアルクーパーのオルガンには心を掻き毟られる。
未熟な己を憂う叫びのように僕は聞こえる。
マイクブルームフィールドのチョーキングの効いたギターも然り。


要するに何が言いたいのかと言うと、ボブディランの素晴らしさは音楽であることだと、改めて思うのです。
音楽は目に見えない。
けれどもメジャーコードの響きに不安を感じる人がいないように、音楽は人間に与えられたひとつの奇跡なのです。
その力を純粋に信じ表現し続ける姿勢が僕はボブディランの最大の魅力だし、功績だと思う。
ディランがなかなかノーベル文学賞受賞についてコメントせずLIVEで歌い続けたのは暗にこのことを自らメッセージしていたんじゃないか、と密かに思って見ていました。


ボブディランのノーベル文学賞受賞によって、歌詞の文学性がより重視されていくかはわかりませんが、
音楽においては、やはり言葉よりも音楽の方がよっぽど偉いんじゃないか。
改めていま僕はそんな風に思ってこのアルバムを聴いています。

2016.Oct.19 Posted

奥田民生『29』

先日、10月4日。

豊洲PITにて、お世話になっている音楽評論家平山雄一さんの新著「弱虫のロック論2」リリース記念パーティに呼んでいただき、奥田民生さんと2マンLIVEを行いました。
それはもうもの凄く楽しい夜になって、忘れられない一夜に。

この日限りのコラボレーションを民生さんにお願いしてみたところ「手をたたけ」「ラーメンたべたい」を民生さんの渋カッコいいエレキギターとともにツインヴォーカルで演奏し、特に感動したのは「手をたたけ」のサビに民生さんが絶妙な下ハモをつけてくださったこと。
事前にライヴリハ音源を民生さんに送ってあったんですが、歌い分けとかも特に決めていなくて、本番当日のサウンドチェックで民生さんに「歌い分けどうしましょうか?」と相談に行ったら「なんとなくやってみながら決めようか」ってことだったので少々緊張しながらぶっつけで演奏を始めてみたらいきなり前述の下ハモがついてました。
「こんな感じでいい?」とステージ上であくまで飄々と尋ねてこられたので「いや、もう最高です。」と。
きっと事前に相当聞き込んでいただいたんだと思う。
それくらい絶妙なハモでした。
感無量。


アンコールでは再び民生さんとともに僕のリクエストで民生さんの曲「息子」を。
CDよりだいぶ長めにとったアウトロで民生さんとうちの古村がギターソロを弾きあうというなんという贅沢な時間。
僕はただただ夢見心地でアコギをかき鳴らしていました。


小学生の頃、僕はこの「息子」で奥田民生の存在を知りました。
ユニコーンはすでに解散していて、民生さんがユニコーンのヴォーカルだということを知るのはだいぶあとになってからでした。
「息子」の次の「コーヒー」ってシングルも好きなんですが、「なんでこの人の曲こんなに渋いのによく耳にするんだろう?」と不思議に思いながらだんだん癖になってハマっていった思い出があります。


そんな「息子」が収録されている『29』というアルバムは、民生さんが29歳の時にリリースしたソロデビューアルバムで、ドラマーのスティーブジョーダン始めアメリカの錚々たる凄腕ミュージシャンと共にレコーディングされています。
当時はそんなこと全然気にしていなかったけど、いま聞くともうヨダレだらだらでるくらいそれはそれは羨ましいメンバーです。


この「息子」という曲は、民生さんが自分に子供が出来る前に書いておきたいという思いで作った、というエピソードが僕はすごく好きで。
まだそこにない、知らない、からこそ想像や妄想が膨らんで、歌はファンタジーを纏って、時空を超えていくものだと信じていて。
すでに起こったこととか、思い出を歌に残すこともあるけれど、それって無意識に事実を音楽的に脚色しちゃう感じがして難しいなっていつも思うんです。
まぁ…時々上手に書けることもあるんですけどね。
「梨の花」とか。(笑)


で、ちょうど一年ちょい前。
僕が29歳も残りわずかで30歳に突入しようっていうときに、20代最後の歌をなんかしら残したいなぁと思ってたんですね。
で、パッと思い出して民生さんの『29』を聴いてみたんです。
そしたらもうもの凄いんですよ、余裕が。(笑)
歌ってることも演奏も。
あと、もの凄い達観してる。
世の中とか自分自身とか。
「息子」もそうだし、1曲目の「674」からもうそんな具合で。
いまの自分と同い年の人の歌じゃないなぁって。
時代観はそりゃああの頃とは違うと思うんですけど、いまこんなこと歌う同い年が自分の周りに現れたらちょっと怖い。(笑)


ただそのときにちょっとピンときて、僕も20代最後に「息子」を書いてみようと思ったんです。
まだ見ぬ自分の子供へ、じゃなくて、まだ見ぬ30代へ。
想像、妄想を膨らませて、いろんな期待とか抱えている不安とか迷いとか矛盾とかと向き合って、最後はそれを全部無視して(笑)
で、生まれたのが「僕は30になるけれど」。
民生さんの20代ラストと比べると、はるかにガキンチョな仕上がりでしたけど、自分の20代ラストの感覚というものはかなりはっきりと残せたんじゃないかなぁと思っています。



最後は『29』のなかで僕が好きなフレーズを。


陽がまた昇る また陽が暮れる とぼけてる顔で実は がんばっている

陽がまた昇る また陽が暮れる とぼけてる顔で実は 知っている

愛する人よ何処へ行く 僕を残して何処へ行く


_「愛する人よ」


民生さんはこの頃から本当に自分自身をよくわかっていて、凄い。

2016.Sep.14 Posted

Peabo Bryson and Regina Belle『A Whole New World』

連載3回目にして、謝罪シリーズ早くも第2弾。

今回はディズニー映画「アラジン」の言わずと知れたあの名曲です。


今年ひょんなタイミングで久しぶりに「アラジン」を観ることになり、エンドロールで流れたこのピーボブライソンとレジーナベルが歌うこのヴァージョンに不覚にもめちゃくちゃ目頭が熱くなってしまったのであります。

いや、もちろん、この「A Whole New World」を初めて聴いて感動したわけではありません。なにを隠そうワタクシ光村、かの東京ディズニーランドのお膝元、千葉県浦安市出身。

ディズニーで育ったといっても過言ではない。

「アラジン」はもちろんリアルタイムで観てますし、音楽の授業でみんなでこの曲を歌ったような記憶もぼんやりあります。

Elton Johnの歌う「Can You Feel The Love Tonight」はいつ聴いても泣けるし、中学二年生の頃たった一人映画館で観た「トイストーリー2」では劇中歌のSara McLachlan「When She Loved Me」で号泣。

高校生の頃のケータイの着メロ(打ってて寒気)に至ってはほぼ3年間ホーンテッドマンションのグリムグリニングゴースト。

「ファンタジア」は年に一回は必ず観ます。

なのでディズニー音楽もディズニー映画も好きなものがいっぱい。

最近のものはちょっと置いておいたとして、苦手なものとかほとんどないんです。

そんな中で唯一、好きになれなかった曲がこの「A Whole New World」。

嫌いだ嫌いだーなんて言い回っていたわけでもありませんが、最近までものすごく避けてました。


理由は最早よくわからないんですけど、、、、、おそらく、当時同じクラスの大して音楽も聴いてないような女子たちが一斉に神曲的に崇めたから、なような気がします。

それによって「僕も好きなんだよ」って言いにくくなった。

いやあ、、、ちっせえ男です。
(でもそういう経験あなたにもあるでしょう?最近友達と飲むとこのテーマで話始めたらけっこう尽きないのでほぼ毎回やってます。)


それによって僕は半ば隠れディズニアンとして生きることになりました。

今日までも、会話の流れが訪れるまではあまり自分からディズニーへの思いや知識を語ることもありません。

しかしながらこのたび、パンドラの箱が開いてしまったんでしょうか。抑えていた感情があふれ出したような込み上げる感動。最早この流れに逆らうことはできませんでした。

ここに今日までの「A Whole New World」への無礼に対する謝罪の念と、そしてワタクシの隠れディズニアンの卒業を宣言して、ディズニーサントラ集をポチりたいと思います。


最後に余談ですが、「アラジン」のエンドロールにて、この「A Whole New World」のヴォーカルプロデュースにデイヴフリッドマンの名前があったような気がしたんですがあれは空目でしょうか。

あるいは同姓同名の別人?検索しても全く出てこなかったので。もしご存じの方いらっしゃいましたら教えてくださいませ。

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